佐藤 VS 佐藤
「美紅、今日デートなんでしょ?元気出さなきゃ!!
今日こそ行成のこと落とすって言ってたじゃん。」
昔のことを思い出しながら アイツの方をチラリと盗み見ていると、
先程より少しだけ声を落としてコソコソと話すのが聞こえた。
そっと視線をずらすと、肩を震わせていた彼女の横顔が目に入る。
頬には、黒い涙。
バッチリだったメイクも崩れて、心なしかいつもより小さく見えた。
「…なぁ、あれ…」
「わ…ほんとだ。」
渉と話していた担任が出て行き、ざわつきが増した教室内は、徐々に彼女たちの様子に気付き始めたようで。
「…美紅、屋上行こ。」
ちらちらと窺うような視線から逃れるように、2人は教室から姿を消した。