佐藤 VS 佐藤
「…じゃあ 発表するぞー!」
クラス中の視線を浴びながら、担任が紙を開く。
ノートの切れ端で作られたらしい そのあみだくじを、祈るような気持ちで見つめた。
「代理委員長はー…佐藤!!!」
「まじかよ!!!」
意地悪な神様は、あたしの願いなんて聞いてくれないらしい。
アイツと関わらずに卒業するという、ささやかな望みさえ、もう叶わない。
「うぅわ!最悪!!」と叫んだアイツを見て、「どんまーい」「行成がんばってー」などの声が飛び交う。
――みんな笑ってた。…あたし以外は。
「佐藤―、相方に迷惑かけないようにちゃんと仕事しろよー?」
「お!ダブル佐藤だな!!」なんてくだらない独り言をつけ加えて、担任はホームルームを終える。
クジのために前に出ていた男子たちが席に戻り始め、あたしは横目でこっそりとアイツを見た。
「…!」
(なんで見てんの!?)
大きな茶色い瞳がこちらを向いていたことに動揺し、慌てて目をそらす。
前に向き直っても、まだ心臓がバクバクしていた。
――横からの視線は、もう感じない。
大きく深呼吸した後、もう一度だけチラリと目をやれば、既にアイツはだるそうに机に伏せていた。