私を愛するその人は、私の向こうに別の女(ひと)を見る
 便器に腰掛け何度か深呼吸をした。
 少し落ち着いて、ふう、と息を吐き出した。

 シーツもズボンも洗わなきゃ。
 早くしないと、落ちなくなる。
 ショーツは……もう、捨てちゃおうかな。

 ここでうじうじしている場合じゃない。

 それは、分かっているのに、ドロっと垂れた鮮血の感覚に、また泣きたくなった。

 ここは、瑞斗さんの部屋なのだ。
 汚い私は、いちゃいけない。

 今度はぐっと涙を堪えて、トイレを出た。
 もう一度ふう、と息を吐き出して、寝室へ向かう。

 シーツを剥がして、ズボンを洗って、それから今日は、瑞斗さんにはできるだけ触らないようにしよう。

 そう決めて、寝室へ戻った。

 けれど、寝室に入った瞬間、私は絶句した。
 シーツも、ズボンも無くなっていたのだ。

 もしかして、瑞斗さん……!

 慌ててバスルームに走った。
 案の定、水のじゃぶじゃぶという音が聞こえる。
 私はその扉を、思いっきり開いた。

「触らないで!」
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