私を愛するその人は、私の向こうに別の女(ひと)を見る

8 私を愛するその人が、私に見ていたもの

「え?」

 キョトンとした顔が、私に向けられた。

「私、見ちゃったんです。昨日、掃除しようとして……書斎で、本棚の……」

「ああ、アルバム?」

 コクンと頷くと、「いいって」と優しい声が返ってくる。

「別に禁止していた訳じゃないし、むしろあんな埃っぽいところに……ごめんね?」

 そんな彼の優しさに、絆されそうになる。
 けれど、私は私を見て欲しかった。

 “小豆沢紗佳”を、見て欲しかった。

「私、“アリサ”さんと似てるから……だから、瑞斗さんは急に好きだ、とか、付き合って、とか……そういう……」

 言いながら虚しくなって、じわんと視界が霞む。

 ああ、ダメだ。
 この恋に蓋をしたのに、好きだって気持ちが溢れちゃう。

 こんなこと言ったって、彼を困らせるだけなのに。
 “アリサ”さんの代わりで、私には充分だったはずなのに。

 何言ってるんだろう……。


 そう、思ったのに。


「何、言ってるの?」

 瑞斗さんのその声が、やたら耳に大きく聞こえた。

 え? と瑞斗さんを見ると、いつもとは違う真剣な眼差しと、目がかち合った。

「僕がいつから紗佳のこと気になってたか、知ってる?」
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