ハズレの姫は、獣人王子様から愛されたい〜もしかして、もふもふに触れる私の心の声は聞こえていますか?〜
守るために
アレクサンドルは、マーガレットを側室達の住む城ではなく、自分が保有している幼い頃の思い出の残る屋敷に住まわせ、そこへ通った。
どう言う訳かこの頃、王妃がアレクサンドルの外出を許すようになっていたのだ。
平民の側室の下へなら行っても構わないと、ただし、夜は必ず城へ戻っている事が条件だった。
それはアレクサンドルにとっては、願ってもない事。
会える時間には限りがあるが、マーガレットと過ごす時は、これまでになく幸せに満ちていた。
マーガレットと紡いでいく日々は、アレクサンドルに生きる希望を与えていく。
自ら愛する者に触れ、初めて唇を重ねた日、この行為がこんなに素晴らしいものだったことを知った。
愛しさが募り、彼女の肌に手を伸ばした。
それは、媚薬なしでは嫌悪しか感じた事がなかった行為。
しかし、マーガレットとの触れ合いは、今まで感じていたものとは全く違い、肌を重ねるという事が、愛を確かめ合う素晴らしい行為なのだと初めて感じた。
腕の中に抱くマーガレットを、離したくないと心から思い、この時が永遠に止まればいいと何度も願った。
「愛している」
告げるたびに、嬉しそうに笑みを浮かべるマーガレットが愛しくて仕方なかった。
アレクサンドルが彼女を側室へと迎えて二か月後。
マーガレットの体に新しい命が宿る。
◇
「平民の側室が…………子を成した⁈ 」
マーガレットの妊娠を知った王妃は、驚愕し激怒した。
何故なら、マーガレットの下へ通う王には媚薬は与えられていなかったのだ。
リフテス王の体は、媚薬無しには何一つ反応しないはず。
それに……。
今まで貴族の美しい女しか知らなかった王だ。
初めて会った平民の女が、物珍しく感じたのだろうどうせすぐに飽きる、と側室に迎えることを許した。
城にも住まわせず、あんな古い屋敷に置いている女。
どんなに平民の女の下へ通おうとも、子など出来るはずがないと王妃は高をくくっていた。
それなのに、平民の女は王の子を身籠った。
その上、今までであれば、子が出来た側室の下へは行くことをせず、生まれた子供にすら興味を示さなかった王が、平民の側室の下へは懐妊後も何度も通っている。
王が自ら会いに行き、子を授けた女。
平民の分際で、王の子を身籠った女。
王妃ジョゼフィーヌはそれが許せなかった。
ずっと城の中に閉じ込めて置くはずだった、麗しいリフテス王。
しかし、だんだんと弱り生気を失ってきていた。
ジョゼフィーヌが気に入っている、あの純美な美しさが損なわれていたのだ。
その為、あの方から助言を頂き、少しの間自由を与えることにした。
それが間違っていたのだろうか?
生気を取り戻した王は私に意見してきた。
あんなに従順で、人形の様だった美しいリフテス王が。
あれは自分が男にし、育て上げたのだ。
あれは、私の物、誰にも渡さない。
……もう、しばらくは外に出さずともいいだろう。
やはりアレは、城の中に入れておかなければ。
何も出来ない、何も知らない麗しい私のリフテス王。
…………私の美しい人形。
◇
マーガレットの妊娠が分かってしばらくした頃それは起きた。
悪戯程度の事からはじまり、次第に悪質さが増していった。
屋敷の周りに汚泥や動物の亡骸が置かれたり、配達された食物や飲み物に毒物が混入されるようになる。
マーガレットは、この事をアレクサンドルに伝えないで欲しいとメリーナに頼んでいた。
彼に自分の事で心配をかけたくない、そう話していた。
屋敷に起こる全ての悪意ある事は、王妃の仕業であると分かっていたからだ。
マーガレットとメリーナが屋敷の外に出ていた時だった。
突然、見知らぬ男達が物陰から襲って来た。
その時は、偶々近くにいた町の人達に助けられ、事なきを得た。
「マーガレット、さすがにコレは黙ってはおけないわ。王様に伝えます」
メリーナは青い顔をしたマーガレットに告げ、アレクサンドルに全てを話すことにした。
今までの様に嫌がらせ程度であれば、メリーナが何とか対処出来たが、直接手を出されてしまえば、もうメリーナ一人で対処して行く事は難しい。
本当なら魔法を使えば簡単な事。
しかし、女性しか住んでいない屋敷に入った刺客が、何者かにやられれば怪しまれる。
魔法を使える事が誰かに知れる、その事態は避けなければならなかった。
◇
メリーナはその後、訪ねて来たアレクサンドルに男達の事を話し、最近周りでおかしな事が起きていると告げた。
アレクサンドルには、残念ながら王妃の行いを止める術はない。
動かせる力もほとんど無い。
彼の味方となってくれているのは、臣下ではブノア大臣と、もう一人、それから侍従長、王の側にいる騎士達。
残る臣下達や側室達は、全て王妃の下にいる。
それでも、アレクサンドルは出来る限りの事をしてマーガレットを守ろうとした。
屋敷の周りに、味方の騎士達に平民のふりをして駐在して貰い、自分は彼女を守る為に屋敷へ行くことを控えた。
常に城にいる事で、王妃の目を自分に向け、マーガレットから逸らそうと考えた。
だが、自分で決めた事とはいえ、会えないことは辛く、せめてもの思いで自室の机の引き出しの奥にマーガレットの絵姿を忍ばせていた。
そんなアレクサンドルの心を知り、ブノア大臣や騎士達は、王妃に知られぬようマーガレットの様子を話して聞かせた。
ーーーーだが王妃がそれに気づかぬはずがない。
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなっても、マーガレットに対する魔の手は止まらない。
王妃にとって、マーガレットはもはや側室の一人ではなかった。
自分からリフテス王を奪う悪女だ。
あの麗しい人形を渡してなるものか……。
絶対に渡さない。
王妃のリフテス王への執着は、執念へと変わっていたのだ。
◇
当時メリーナは、マーガレットを連れマフガルド王国へ戻ろうかと考えた事があった。
二人をずっと近くで見守って来たメリーナには、マーガレットとアレクサンドルの運命の絆が見えいた。
いま二人を離してしまえば、その絆が切れてしまうことも分かってしまったのだ。
マーガレットのお腹には、シリルの宿命の子が宿っている。
絆が切れれば、シリルとの宿命の子は消えてしまう。
シリルに必ず守ると約束したのだ。
それに、メリーナは二人の事が大好きだったから、どうしても出来なかった。
◇
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなって、半年が経った。
彼が城から出なくなった事が効を奏したのか、マーガレットの周りで起きていた不穏な動きは、収まりを見せていた。
どう言う訳かこの頃、王妃がアレクサンドルの外出を許すようになっていたのだ。
平民の側室の下へなら行っても構わないと、ただし、夜は必ず城へ戻っている事が条件だった。
それはアレクサンドルにとっては、願ってもない事。
会える時間には限りがあるが、マーガレットと過ごす時は、これまでになく幸せに満ちていた。
マーガレットと紡いでいく日々は、アレクサンドルに生きる希望を与えていく。
自ら愛する者に触れ、初めて唇を重ねた日、この行為がこんなに素晴らしいものだったことを知った。
愛しさが募り、彼女の肌に手を伸ばした。
それは、媚薬なしでは嫌悪しか感じた事がなかった行為。
しかし、マーガレットとの触れ合いは、今まで感じていたものとは全く違い、肌を重ねるという事が、愛を確かめ合う素晴らしい行為なのだと初めて感じた。
腕の中に抱くマーガレットを、離したくないと心から思い、この時が永遠に止まればいいと何度も願った。
「愛している」
告げるたびに、嬉しそうに笑みを浮かべるマーガレットが愛しくて仕方なかった。
アレクサンドルが彼女を側室へと迎えて二か月後。
マーガレットの体に新しい命が宿る。
◇
「平民の側室が…………子を成した⁈ 」
マーガレットの妊娠を知った王妃は、驚愕し激怒した。
何故なら、マーガレットの下へ通う王には媚薬は与えられていなかったのだ。
リフテス王の体は、媚薬無しには何一つ反応しないはず。
それに……。
今まで貴族の美しい女しか知らなかった王だ。
初めて会った平民の女が、物珍しく感じたのだろうどうせすぐに飽きる、と側室に迎えることを許した。
城にも住まわせず、あんな古い屋敷に置いている女。
どんなに平民の女の下へ通おうとも、子など出来るはずがないと王妃は高をくくっていた。
それなのに、平民の女は王の子を身籠った。
その上、今までであれば、子が出来た側室の下へは行くことをせず、生まれた子供にすら興味を示さなかった王が、平民の側室の下へは懐妊後も何度も通っている。
王が自ら会いに行き、子を授けた女。
平民の分際で、王の子を身籠った女。
王妃ジョゼフィーヌはそれが許せなかった。
ずっと城の中に閉じ込めて置くはずだった、麗しいリフテス王。
しかし、だんだんと弱り生気を失ってきていた。
ジョゼフィーヌが気に入っている、あの純美な美しさが損なわれていたのだ。
その為、あの方から助言を頂き、少しの間自由を与えることにした。
それが間違っていたのだろうか?
生気を取り戻した王は私に意見してきた。
あんなに従順で、人形の様だった美しいリフテス王が。
あれは自分が男にし、育て上げたのだ。
あれは、私の物、誰にも渡さない。
……もう、しばらくは外に出さずともいいだろう。
やはりアレは、城の中に入れておかなければ。
何も出来ない、何も知らない麗しい私のリフテス王。
…………私の美しい人形。
◇
マーガレットの妊娠が分かってしばらくした頃それは起きた。
悪戯程度の事からはじまり、次第に悪質さが増していった。
屋敷の周りに汚泥や動物の亡骸が置かれたり、配達された食物や飲み物に毒物が混入されるようになる。
マーガレットは、この事をアレクサンドルに伝えないで欲しいとメリーナに頼んでいた。
彼に自分の事で心配をかけたくない、そう話していた。
屋敷に起こる全ての悪意ある事は、王妃の仕業であると分かっていたからだ。
マーガレットとメリーナが屋敷の外に出ていた時だった。
突然、見知らぬ男達が物陰から襲って来た。
その時は、偶々近くにいた町の人達に助けられ、事なきを得た。
「マーガレット、さすがにコレは黙ってはおけないわ。王様に伝えます」
メリーナは青い顔をしたマーガレットに告げ、アレクサンドルに全てを話すことにした。
今までの様に嫌がらせ程度であれば、メリーナが何とか対処出来たが、直接手を出されてしまえば、もうメリーナ一人で対処して行く事は難しい。
本当なら魔法を使えば簡単な事。
しかし、女性しか住んでいない屋敷に入った刺客が、何者かにやられれば怪しまれる。
魔法を使える事が誰かに知れる、その事態は避けなければならなかった。
◇
メリーナはその後、訪ねて来たアレクサンドルに男達の事を話し、最近周りでおかしな事が起きていると告げた。
アレクサンドルには、残念ながら王妃の行いを止める術はない。
動かせる力もほとんど無い。
彼の味方となってくれているのは、臣下ではブノア大臣と、もう一人、それから侍従長、王の側にいる騎士達。
残る臣下達や側室達は、全て王妃の下にいる。
それでも、アレクサンドルは出来る限りの事をしてマーガレットを守ろうとした。
屋敷の周りに、味方の騎士達に平民のふりをして駐在して貰い、自分は彼女を守る為に屋敷へ行くことを控えた。
常に城にいる事で、王妃の目を自分に向け、マーガレットから逸らそうと考えた。
だが、自分で決めた事とはいえ、会えないことは辛く、せめてもの思いで自室の机の引き出しの奥にマーガレットの絵姿を忍ばせていた。
そんなアレクサンドルの心を知り、ブノア大臣や騎士達は、王妃に知られぬようマーガレットの様子を話して聞かせた。
ーーーーだが王妃がそれに気づかぬはずがない。
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなっても、マーガレットに対する魔の手は止まらない。
王妃にとって、マーガレットはもはや側室の一人ではなかった。
自分からリフテス王を奪う悪女だ。
あの麗しい人形を渡してなるものか……。
絶対に渡さない。
王妃のリフテス王への執着は、執念へと変わっていたのだ。
◇
当時メリーナは、マーガレットを連れマフガルド王国へ戻ろうかと考えた事があった。
二人をずっと近くで見守って来たメリーナには、マーガレットとアレクサンドルの運命の絆が見えいた。
いま二人を離してしまえば、その絆が切れてしまうことも分かってしまったのだ。
マーガレットのお腹には、シリルの宿命の子が宿っている。
絆が切れれば、シリルとの宿命の子は消えてしまう。
シリルに必ず守ると約束したのだ。
それに、メリーナは二人の事が大好きだったから、どうしても出来なかった。
◇
アレクサンドルが屋敷を訪れなくなって、半年が経った。
彼が城から出なくなった事が効を奏したのか、マーガレットの周りで起きていた不穏な動きは、収まりを見せていた。