狂おしいくらいの激情を…貴女に
「お嬢様」
「ん?」

「ダメですよ」

「え………」

「ダメです。
貴女を抱くなんてできない」

「どう…して…?
私……魅力ない?
男の人って、愛がなくても抱けるんでしょ?」

「できません」
絋琉はゆっくり青蘭から下り、ベッド下に跪いた。


魅力がないわけがない。
寧ろ、煽られて理性を保つのが大変だ。

本当は、抱きたい。

むちゃくちゃに抱いて、抱き潰してしまいたいくらいだ。


でも、絋琉には無理だ━━━━━━

だって絋琉には“今日だけ”なんて無理なのだから。

きっと今日抱いてしまうと、今まで必死に抑えていた欲求が崩壊してしまうだろう。

毎日、毎日、毎日、毎日、毎日……………
青蘭を抱くために、この部屋に通うようになりそうだ。

郡至にも、渡したくなくなる。

例え、郡至と結婚しても毎日会いに行って襲うだろう。

一度外れてしまったタガは、きっともう……


元には戻らない━━━━━━━




「━━━━━━お嬢様、申し訳ありません」


「充城は……私のこと、どう思ってる?」


愛している。
いや、そんな言葉で表現できるレベルではない。

愛しくて、苦しくて、息ができないくらいだ。




「お嬢様は…………
僕の大切な━━━━━」

「大切な?」


「━━━━━━ご主人様です」



青蘭の瞳が、悲しみに揺れる。

絋琉が今まで見てきて、初めての表情だった。

悲しみ、苦しみ、痛み…………絶望を表したかのような。


「………そう」

青蘭は一言そう言うと、ゆっくり立ち上がった。

「頭、冷やして寝る。
充城は、お部屋に戻って休んで。
こんな夜遅くに呼び出して、ごめんなさい。
おやすみなさい」

項垂れるように、バスルームへ向かった。



青蘭の部屋を出た、絋琉。

“青蘭の思い、不安、苦しみ、痛み……全部”

郡至の言葉が蘇った。


「あぁ……確かに俺は、何もわかってなかったな…」


ポツリと呟いて、部屋へ戻った。
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