狂おしいくらいの激情を…貴女に
「━━━━━ご主人様、旦那様、奥様。
大切なお話があります」

後日━━絋琉は重富の部屋に向かい、富雄と蘭を交えて伝えた。


「僕に、青蘭お嬢様との結婚のお許しをください」


「………」

「とっくに、ご主人様方の耳には入ってると思いますが、僕達は本気で愛し合ってます」

「でも、お前は執事だぞ」

「はい。
ですから、僕を宝来の会社で働かせてください。
もちろん、執事業務をきちんとおこないます」

「お前に、できんの?」
富雄が睨み付けた。
「そもそも、どうやって郡至を説得した?
あいつは、昔から青蘭しか見てなかった。
並大抵の想いじゃなかった。
その郡至が“婚約破棄”なんて、普通はあり得ない」

「僕“なら”できます。
10年前、僕の経歴を調べたご主人様なら、わかるかと」

「…………そうかもな」

「郡至様には“将来のために”手を引いていただきました」


「…………青蘭は、何て言ってるの?」
蘭が、絋琉を見据え切なく瞳を揺らし言った。

「もちろん。
受け入れてくれました」

「━━━━━それはないわね」

「は?」

「青蘭を見ればわかるわ。
あの子、控え目でお人好しでしょ?
だから、自分の意見を絶対押し通せない。
充城は10年だろうけど、私は倍あの子を見てる。
あの子はね。
“助けてほしい”時……絶対こう言うの。
“大丈夫だよ。私は幸せ”って」

「最近の青蘭の口癖だな」

「わかるわよね?充城。
青蘭は、私達に助けを求めてる。
結婚、認めるわけにはいかないわ」

「そうですか……」

「青蘭は、充城のこと本当に好きなんだと思う。
でも、充城の愛情は“普通じゃない”
そんな人に渡す親はどこにもいないわ」

蘭の言葉に絋琉は一度目を伏せ、そしてまた三人を見据えた。



「だったら、お嬢様を拐うだけです」


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