狂おしいくらいの激情を…貴女に
「充城!!?/////」

驚愕と恐怖。
でも少し顔を赤くした青蘭が、絋琉を見上げた。

「も、申し訳ありません!
とにかく、お飲み物を飲ませないとと思って……!
怖がらせるようなことをして、本当に申し訳ありません!」

立ち上がり、深く頭を下げ謝罪する絋琉。
しかし、絋琉は知っている。

この方は“許さない”とは、絶対に言わない。
滅多に怒ったりしないのだ。

「う、ううん…」

ほらね━━━━!
お人好しな青蘭は、大抵ことは相手を許すのだ。

しかし怖がらせたことには変わりない。
絋琉は、自己嫌悪に陥るのだった。



━━━━━━ぐっすり眠っている青蘭の口唇をなぞりながら、パーティーのことを思い出していた絋琉。
「口唇、柔らかかったなぁ…」

柔らかくて、熱くて、ほんのり甘かった……!

絋琉は頭を振り、卑猥な考えを払拭する。

腕時計を確認する。
もうすぐ、青蘭の起きる時間だ。
その前に使用人室に向かい、朝礼と情報共有を行わなければならない。

ため息をつく。
「行かないと……
はぁ…幸せな時間は、すぐに終わってしまう…」


早朝のこのわずかな時間は、絋琉にとって至福の時間だ。



━━━━━━━青蘭に出逢ったのは、10年前。
当時22歳だった絋琉は、とても賢く全国模試でも上位二位以下になったことのない秀才だった。

有名大学を卒業後は、一流企業に就職も決まり将来は安泰だった。

そんな絋琉。
友人は様々いて、中には悪い友人もいた。
その中の友人の一人が、詐欺にあい自殺したのだ。

その怒りから絋琉は我を忘れる程怒り狂い、詐欺軍団を半殺しにしてしまう。

その事で内定は取り消し、親にも勘当されたのだ。

それから一年間は、もう……ぼろぼろだった。

毎日のように喧嘩や酒三昧、色んな女の家に泊まり歩く。
そんな生活を続けていたのだ。


そんな時だった━━━━━━

その日も喧嘩をしてぼろぼろになり、ふらふらとあてもなく歩いていた絋琉。

ある屋敷前で力尽き、壁にもたれて座り込んだ。
その屋敷は、言わずもがな宝来邸の屋敷前だ。

そこへ、高級車がゆっくり止まる。

ドアの開く音がする。
しかし、もう…ぼろぼろで目の前がかすれている。

「大丈夫ですか!!?
しっかりし━━━━━━」

そこで、絋琉の意識は途切れた。
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