狂おしいくらいの激情を…貴女に
約束
静かに青蘭の部屋を出て、使用人室に向かう。

大路を始め、宝来邸の執事・メイド・料理人などが集まる。

「━━━━━━では。皆、集まったかな?
おはよう!」

「「「おはようございます!」」」
使用人達が、声を揃えて頭を下げる。

「━━━━━━」
今日の予定が、大路によって伝えられていく。

「そして19時から屋敷に熊川様が来られ、皆様でお食事になっている。
熊川様は、生物をお召し上がりにならない。
なので米崎くん、全てのお食事に火を入れるように」
「はい。かしこまりました」

「更に、菌や埃に過敏に反応される潔癖な方。
お掃除にも、今まで以上に抜かりのないように」
「「「はい!」」」
メイド達が、声を揃えて返事をする。

「そして、絋琉。
お嬢様の予定を━━━」
「はい。
本日の大学の講義は、午前中の一限だけです。
午後からは、郡至(ぐんじ)様とランチを召し上がるお約束があります」

「後は、大丈夫かな?
━━━━━では!皆さん、今日も一日よろしくお願いします!」


情報共有を終え、絋琉は青蘭を起こしに向かう。
青蘭の部屋に向かい、身だしなみをもう一度整えノックをする。

「失礼いたします」
今度はきちんと挨拶をして、ドアを開け中に入った。
カーテンの隙間から、日が射し込み青蘭を淡く照らす。
その姿が、とても美しい。

「ほんと、綺麗な方だ……/////」

ゆっくり近づき、青蘭を起こす。
「お嬢様、お嬢様……!」
「んん…」
ゆっくり青蘭の瞼が震えて開いた。

「おはようございます!」
「あ…朝…」
「はい。起きて準備しましょう」

「ん…わかった…」


「━━━━━━充城」
「はい」
「服、どっちがいいかな?」

青蘭は、その日の服を必ず絋琉に決めてもらう。
青蘭にとって、これには深い意味がある。

「そうですね……こっち…かな?
今日は、郡至様とランチですから。
こちらの方が、お嬢様の可愛らしさが引き立ちますし!」

一瞬、青蘭の瞳が悲しみに揺れた。
「お嬢様?」

「ううん!
じゃあ、こっちにする!」
しかしすぐに表情は戻り、青蘭が微笑んだ。

絋琉も微笑み返し、一度部屋を出た。
ゆっくりドアを閉め、息を吐く。

青蘭は最近、絋琉が郡至の話をすると、とても切ない顔をする。

「なんなんだ……?」
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