狂おしいくらいの激情を…貴女に
絋琉が車の後部座席のドアを開け、青蘭が乗り込む。

「では、お嬢様。閉めますね」
声をかけ、ドアを閉めて運転席に乗り込んだ。

ゆっくり発進し、大学へ向かう。

青蘭のスマホの着信音がなる。
確認すると、郡至からのメッセージだった。

『おはよう(^^)
いつもの門の所で待ってるよ~!』
「おはよう!
さっきお家を出たから、もうすぐ着きます(^_^)」

返事を返すと、絋琉がバックミラー越しに声をかける。
「郡至様ですか?」

「うん。いつもの門で待ってるって」
「さようですか。
では、急ぎましょう。
あまり待たせてはいけませんね!」

「…………急がなくていいよ」

「え?お嬢様?」

「あ、う、ううん…
あ、ほ、ほら!急いで事故にあったら大変だし!」
思わず言ってしまい、青蘭は慌ててフォローする。

“少しでも長く充城といたい”という気持ちが、言葉となって出てしまったのだ。

「………」


大学に着き、運転席を降りると郡至が声をかけてきた。
「おはよ、充城」

富樫(とがし) 郡至。
富樫財閥の御曹司で、幼馴染み。
そして、青蘭の許嫁だ。

郡至は許嫁だからとか関係なく青蘭を愛していて、嫁に迎え入れたいと思っている。


「おはようございます、郡至様」

郡至も、絋琉と青蘭が想い合っていることは、なんとなく察している。
その為郡至は、絋琉にかなりの敵対心を持っている。

そしてそれは絋琉も感じ取っていて、絋琉も郡至を苦手としている。

郡至に一礼してから、後部座席のドアを開ける。

「郡ちゃん、おはよう!」
そう言いながら、車を降りようとする。

絋琉と郡至が、同時に手を差し出した。

「━━━━━!!?
フフ…ありがとう!」
青蘭は笑って、二人の手を取った。

青蘭が降りると、郡至が軽く自分の方に青蘭を引っ張った。
そして腰を抱いた。

「後は大丈夫だから。
“婚約者の”俺がいるし、帰りなよ」

「……………はい。
お嬢様、行ってらっしゃいませ!」
絋琉は少し間を置いて青蘭に向き直り、丁寧に頭を下げた。

「うん。
行ってきます!
充城、帰りは気をつけてね!」
青蘭は小さく手を振り、郡至と共に大学内へ向かった。
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