狂おしいくらいの激情を…貴女に
絋琉は、青蘭が見えなくなるまでそこに立ち尽くす。
それは毎日のことだ。

少しでも長く、青蘭を目の中に焼きつけておきたいから。

そして更に━━━━━

“あの郡至のお嬢様の腰を抱いている手を、今すぐに剥がしてめちゃくちゃに折ってしまいたい”
凄まじい嫉妬心を心の中にひめて立ち尽くすのだ。


青蘭が見えなくなり、運転席に戻ろうとするとスマホが震えた。

もしかしたら、お嬢様かも?
期待を込めるようにスマホを操作する。

しかし、相手は郡至で━━━━━━

『言い忘れてた!
今日のランチ、俺が車で連れてくから充城は送り迎え不要だよ。
今日の宝来の食事会もお祖父様に呼ばれてるから、それまでゆっくり二人で過ごして二人で屋敷に向かうから。
よろしくー』

絋琉は無言で、そのメッセージを見つめていた。
スマホを、凄まじい力で握りしめながら。



「━━━━━━青蘭、ここ!どうかな?」
講義室に着いて、並んで座り席に着いた青蘭と郡至。
郡至がスマホ画面を見せながら問いかける。

「わぁー、綺麗な景色ね!」
「今日のランチ、ここどうかなって!」

「素敵!」
「良かった!」
微笑む青蘭に、郡至も嬉しそうに青蘭の頬に触れた。

「ん…郡、ちゃん…?」
「ん?
可愛いなーって」

「そんな、こと…/////」

「キスしていい?」
「え……ここで?」

「うん…ここで!
俺達は、婚約者同士だもん!
場所なんか関係ないよ?」

「だからって…/////」
「チュッてするだけ……」
ゆっくり郡至の顔が近づく。
青蘭は、ギュッと目を強く瞑った。

「おっはようー!!」

口唇が重なる寸前に、郡至の動きがピタッと止まる。
「青蘭~ちょっと話があるの。
郡至、青蘭をちょっと借りるねー」
「はぁ!!?ちょっ…」
強引に青蘭を連れていってしまった。


「━━━━━大丈夫だった?青蘭」
「え?」
「ほんと、あいつは…」

「陽ちゃん…」

今泉(いまいずみ) 陽香(きよか)
陽香もまた、一流商事の愛娘だ。
青蘭の親友で、控え目でお人好しな青蘭を今回のように色々と助けてくれる。

「青蘭、嫌っていいな!」
「でも…」

「郡至は婚約者だけど、好きな人じゃないでしょ?」
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