怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
よし! これで今日の仕事はおしまい、っと。

「真希ちゃん、お疲れ。もうあがっていいからね」

「あ、義さん。いいんですか? なにか手伝います?」

慌ただしく一日が終わり、ふぅと息をついてエプロンを脱ぐ。義さんはまだ事務仕事をしていたけれど、すぐに終わるから大丈夫と笑顔を向けた。

「これから彼氏とデートなんでしょ?」

「え?」

「だって、夕方くらいからなーんかソワソワしちゃってさ、真希ちゃんはわかりやすいからなぁ」

義さんが口元を緩めてニンマリとする。私が相良さんと付き合っていることまでは知らないようだけど、なんだかすべて知られている気がしてドキリとした。

「デート、とかそういうんじゃないんですけど……」

「ここはいいから、早く帰りな」

「はい、すみません、お疲れさまでした」

そんなにソワソワしてたかな、私。

そのソワソワの原因。それは夕方頃に相良さんから【今日は一緒に帰れそうだ。地下駐車場で待ち合わせな】というメールが来たからだろう。彼と同じ時間に仕事が終わることは滅多になくて、一緒に同じ家に帰るというだけで嬉しくて浮かれてしまう。
義さん、案外勘が鋭かったりするからなぁ。

私服に着替えてからエレベーターで地下まで降りて、相良さんがいつも車を止めている場所へ歩く。と、その途中、ちょうど角を曲がったところで人影らしきものが物影に隠れるのが見えた。

え? あれは……。
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