怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

目を凝らさなくてもその人影が何をしているのか遠目でもわかった。それは、二人の男女がくねくねと熱烈なキスを交わしているところだった。私に背を向けている男性の首に女性が腕を回して、男性は女性の短いタイトスカートの裾から手を入れてそのムチムチした太腿を撫であげていた。しかもその男性は……。

瀬戸先生、だよね？

ようやく私の気配に気づいた男性がチラリと肩越しにこちらを見ると、やはり整形外科医の瀬戸京太先生だった。

「お取込み中、す、すみませんっ」

「あー、いいのいいの、気にしないで」

そう言われても！　こんなところでキスなんかしてたら気にするでしょ！

瀬戸先生は相良さんと同級生で歳も同じ。ここの病院内では特にチャラ男で有名だ。そして酒、ギャンブル、煙草、なにより女好きときている。

瀬戸先生と情熱的なキスをしていた女性は、私に見られて恥ずかしかったのか顔を赤らめてそのまま駐車場から足早に去って行った。瀬戸先生はそんな様子をフフッと笑い、甘栗色のクセ毛を掻き上げてから、私が立っている所へずいずい歩み寄ってきた。

はぁ、こんなところで瀬戸先生と遭遇するなんて！　苦手なタイプなんだよなぁ。

医者あるまじき不摂生な生活は言わずもがなで、それでもなぜか女性職員には“野性的なところがステキ！”と人気があるから不思議だ。

背も高くて彫りも深く、確かにワイルド系イケメンではあるけれど……。