怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
手術を芸術と例える変わった先生で、この前なんか『この前入荷したメスのシェイプが最高にセクシーすぎる。使い捨てなのか実に惜しい』と苦笑いしている研修医を前にメルディーで食事をしていた。

「んー? 君は、確か……」

「な、なんですか?」

わざとらしく親指と人差し指で顎をさすりながら顔をぐっと覗き込まれ、咄嗟に目を逸らす。

「ふぅん、小野田さんって君か。メルディーでシェフをやってるだろ? いつも可愛い子だなぁって、思ってたんだよね。うん、私服だとイメージ違うな」

オープンキッチンのデメリットは仕事中、見られたくない人から無防備に見られてしまうところ。

そんなふうに瀬戸先生が私のことを見ていたなんて……全然嬉しくないし!

つま先から頭のてっぺんまで見定めるように見られて、早くこの場から立ち去りたいと思っていると、瀬戸先生がニンマリと意味ありげに微笑んだ。

「相良とはどう? うまくいってるの?」

「どうって、どういう意味ですか?」

警戒心むき出しの私を宥めるみたいに瀬戸先生が白い歯を覗かせて微笑む。

「学生時代からあいつのことはよく知ってるよ、堅物で無愛想で変なところにこだわりがあって、女にもまったく興味なさそうだからもしかしてこっちの人? って思ってたけどさ」

瀬戸先生がおどけて手の甲を頬にあてがう。

よく知ってるって言うけど、瀬戸先生が相良さんのことをどこまで知ってるかなんてわからない。
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