怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
瀬戸先生が私の警戒心を解そうとわざと適当なことを言ってるかもしれないし。

でも、こういう人にわざわざ「相良さんとお付き合いしています」なんて敢えて言う必要もないだろう、むしろかえって事をややこしくするだけだ。

「ねぇ、相良とどういう関係なの? 誰にも言わないからさ、ここだけの話でちょっと教えてよ」

「あの、あんまりプラベートなことは……ッ!?」

距離を縮めてくる瀬戸先生から一歩引こうとしたとき、不意に後ろから肩を抱かれるようにグイっと引き寄せられた。

「彼女になにか用か?」

頭の上から降ってきた低い声は相良さんの声だった。見ると相良さんはくっきりと眉間に皺を寄せ、唇をへの字に歪めて明らかに不機嫌な表情を瀬戸先生に向けている。

「こんなところで仕事さぼってないでさっさと医局戻れよ」

「へいへい、ちょっと休憩してただけだろ? じゃあね、また今度ゆっくり邪魔が入らないところでお話ししようね」

瀬戸先生は興が冷めたようにボリボリと頭を掻きながらあくびをすると、私に目配せしてその場を去っていった。

「帰るぞ」

「あ、は、はい」

私の肩を抱いていた腕をさっと離し、そそくさと自分の車へ向かって歩き出す。

うぅ、なんか機嫌悪そう。
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