怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
食べたい物を食べられないっていうのもつらいよね。

本来、ここに就職をしたのも、病気と闘う人にももっと料理を楽しんで食べてもらいたい。という気持ちからだった。

でも実際のところ、これといってまだなにもできていないよなぁ。

はぁ、と人知れず小さなため息をつくとランチタイムが近づくにつれ、お客さんが徐々に増えてきた。

「小野田さん、こんにちは」

作業をしていると、カウンターの向こうから声をかけられた。振り向くと笑顔で片手を軽く上げている木内さんが立っていた。

「今日はいつものランチタイムより早いんですね」

木内さんがランチに来るときはいつも正午を少し過ぎた頃のはずだけど、今日は一時間早くメルディーに現れた。

「うん、まぁ、こういう日もあるさ。それに仕事が今暇でね、また今夜も来ちゃおうかなって思ってる。なんせここの食事は美味しいからねぇ」

「そうなんですか、ありがとうございます」

木内さんが一日に二回も来るなんて珍しいな。

窓際の席に座り、メニューを開くこともなくオーダーをする木内さんを遠目で見ていると。

「おい、なにぼさっとしてんだ?」

「わっ! び、びっくりした」
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