怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

辺りに木内さんの怒気がこもった大きな声が響き渡り、なんだなんだと周りの視線が集まる。その様子に我に返った木内さんが小さく咳払いをして「ごめん」とポツリと呟いた。

「はぁ、最低だよな、小野田さんに八つ当たりするなんてさ、すまないけど……もう部屋に戻るよ。気分が悪い」

「あ、あの――」

どんな言葉をかけるか考えるよりも先に呼び止めてはみたものの、木内さんは踵を返してそそくさとエレベーターのある方へ歩いて行ってしまった。

はぁ、余計なこと言っちゃった……最低なのは私だよ。

俯き加減に歩く木内さんの背中を見つめていると、自分の無力さに情けなくなってくる。するとそのとき。

ん？　木内さん？

普通に歩いていたはずの彼の足が急にふらつきだす。そしてその場で壁に寄りかかって身を縮こませるような仕草をし、異変に気づいたときにはもう膝が床に崩れていた。

「木内さん！」