怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「どうしたの? 真希ちゃん、ため息なんてついて」

「あ、すみません」

だめだなぁ、木内さんのことが気になって仕事もろくに手がつかないよ。

義さんに声をかけられ慌てて手先を動かす。

ぼーっとしてないで仕込みの続きしなきゃ。

あの時の木内さんは血の気がなく指先は震えていた。苦しげに眉間に皺を寄せて、あんな木内さんを見たのは初めてだった。

「まーきちゃん、よっ! 元気?」

私の気持ちとは裏腹な明るい声がしてパッと顔をあげると、瀬戸先生がキラキラしたオーラを放ちながらカウンターの向こうでにっこり微笑んでいた。

「瀬戸先生……」

まーきちゃん、ってなんでいきなり下の名前?

「なに、元気ない感じだね? そんな浮かない顔してたら可愛い顔が台無し」

「あの、お食事ですか? ご注文ならお席でお願いします」

あはは、と苦笑いしながら言うと、瀬戸先生は意味ありげに唇の端を押し上げた。

「君に忠告があって来たんだ。俺も忙しいしこれからオペだし?」

「そんな忙しい合間を縫ってなんの忠告でしょうか?」

昔から瀬戸先生は苦手だ。人を小馬鹿にしたような軽くあしらうような態度が引っかかる。だから無意識にムッとした顔になってしまう。
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