怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「倒れる前、木内さんが嘘をついていることを私が責めたりしたから……余計なこと言ったから……木内さん、怒ってしまって、馬鹿ですよね、患者さんの苦しみなんて本人にしかわからなのに……」

震える声を振り絞り、嗚咽が混じった途切れ途切れの言葉を相良さんはじっと黙って聞いていた。

「なるほどな。それで血圧が上がって発作がでたってわけか」

相良さんは納得したようにため息をついた。

「きっかけはどうあれ命に別状はなかったようだし、だからもう深く考えるな」

「わっ、もう何するんですか」

ガシガシと私の頭を撫でくり回しニッと笑う。これは相良さんなりの“元気を出せ”という励ましのメッセージだ。

「落ち着いたらお見舞いに行ってみようかなって思ってるんですけど、木内さんはもう一般病棟に移動してますか」

とにかく、元気な姿の木内さんを見ない事には落ち着かない。気になって相良さんにそれとなく尋ねてみる。けれど。

「さぁね」

意外にも素っ気ない返事が返ってきて、私と目が合うとフイッと視線を逸らした。
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