怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
友梨佳先生の言葉にきょとんと目を瞬かせると、彼女がムッとした顔で私を見た。

「あなた、付き合っている割にはなにも知らないのね。彼、アメリカのマラフィン総合病院の脳神経外科臨床医として引き抜きの声がかかっているのよ」

「え?」

う、嘘でしょ?

マラフィン総合病院とは医療関係者なら誰もが知っているアメリカ東部にある巨大病院だ。州立大学のメディカルスクールの関連医療機関でもあり、マラフィン総合病院の勤務者、研究者の中には世界的にも有名な賞を受賞した人もいる。最先端技術やドクターを終結させている病院といっても過言ではない。

「これは医師としてとても名誉なことなのよ、学生の頃、よく『マラフィンでの臨床医は俺の夢みたいなものだ』って言ってたもの。それなのに、その話を断るなんて馬鹿よ」

友梨佳先生の話によると、聖一さんの論文が学会で高い評価を受け、先日、先方から臨床医としてどうかと連絡があったという。それを聞いた聖一さんのお父様も「医師として箔がつく」と喜んでいたそうだ。

「どうしてそんなお話を断ったりなんか――」

「察しが悪いわね、あなたのせいでしょ?」

私の言葉を遮り、友梨佳先生が苛立ちを滲ませた目で私を睨んだ。

「あなたの存在が聖一の枷になってるのよ!」

友梨佳先生のあげた声が廊下に響き、たまたま通りがかった看護師が驚いてこちらを見ている。
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