怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「真希には関係ない。俺が決めたことだ」

室内にピリッとした空気が張りつめ、棒立ちになる私の目の前で聖一さんが長い脚と腕を組んでソファに座っている。

「でも……」

聖一さんが、明らかに不機嫌な眼差しでじっと私を見つめた。

「電話の相手もお前は知らなくていいしアメリカ行きの話だって、まったく、友梨佳のやつ……」

聖一さんがチッと小さく舌打ちをする。普段温厚な性格だけに、ここまで苛立ちを露わにされると尋ねたことを後悔した。
タイミング、見誤ったかな……。

うぅ、どうしよう、怒らせちゃったみたい。

聖一さんが帰宅してからしばらくふたりで他愛のない話で盛り上がった。そして話の区切りがついたところで改めて友梨佳先生との婚約の話、電話の相手はいったい誰なのかとうことを尋ねたら、今まで笑っていた聖一さんの表情から一気に笑顔が消え、冷めた態度に豹変してしまった。

「関係ないって、私たち恋人同士ですよね? 私のせいで友梨佳先生との婚約を破棄したんですか? アメリカ行きの話も……もしかして、最近頻繁にかかってくる電話の相手って、聖一さんのお父様じゃ……」

彼のアメリカ行きをお父様は喜んでいたと友梨佳先生が言っていた。それを断ったと聞いて、きっと考えを改めるように説得の電話をかけていたのかもしれない。

それにそんな大事な話を友梨佳先生は知っていたのに、恋人である私が知らなかったなんて……。

そう思うと胸の中に黒いモヤが立ち込めてくる。
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