怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「やっぱり両親を置いて日本を離れるなんてできない」

「じゃあ、恋人より親を選ぶってこと?」

つまりはそういうことだ。言われなくてもわかっていることを指摘され、思わず唇を噛む。

「ごめん、責めるつもりで言ったんじゃないの。ただ……それでご両親は満足するのかな?」

「え?」

「相良先生がアメリカ行きを断った理由を自分のせいにして欲しくないって思ったわけでしょ? ご両親だって自分たちのせいで娘の幸せを奪いたくないって思うんじゃない?」

母は聖一さんとの交際を応援してくれている。だから親が心配で彼と一緒には行けなかった、なんて言えばきっと母も由美の言う通りのことを思うかもしれない。

「結婚前提のお付き合いなんでしょ? 相良先生にとっては真希が一緒にアメリカに来てくれることを望んでいるんだろうけど……状況を考えたら私だって選択に困るかも」

由美は現在、脳神経外科の研修医として聖一さんと行動を共にしている田原先生と付き合っている。彼もまだまだ医者として修業の身だから忙しくてデートもままならないみたいだけど、なんとかうまくやっているようだ。

母も何かあれば私を頼りにしているみたいだし。なかなか子離れできない親だなんて思っていたけれど、由美と話していたら自分も親離れできていないことに気づく。

「相良先生ともう一度話し合ってみたら? ひとりでくよくよ悩んでいたってしょうがないじゃない」

「うん、そうだね」

力強い言葉と共に明るい笑顔を向けられて、私もつられて頬を緩ませた。

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