怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
由美と店の前で別れ、空を見上げるとどんよりとした雲が夜空に立ち込めていて今にも冷たい雨が降りそうだった。
聖一さんは自分のことよりも私のことを考えてくれていたというのに、昨夜は勝手なことを言って困らせてしまった。由美に励まされてなんとか元気を取り戻し、帰ったらちゃんと謝ろうと、私は頭の中で彼に言う言葉をあれこれ考えながら帰路に足を向けた。
ん?
玄関のドアを開けると、ピカピカに磨かれた見慣れない男性用の革靴に目がいった。聖一さんが新しい靴を買ったのかと思ったけれどサイズが違う。
誰か来てるのかな?
リビングに繋がる廊下を歩いていると、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。そしてドアを開けようとノブに手をかけたそのとき。
「もう帰ってくれないか? 何度説得しようと俺の気持ちは変わらない」
ひと際荒っぽい聖一さんの声が響いてノブにかけた手がビクッと跳ねた。
「医者として滅多とないチャンスを高々女ひとりのために無駄にするなんて、まったく愚かだな」
初めて聞く低く渋みのある声音。おそらくこの声の主は、聖一さんのお父様だと直感した。
「しかもアメリカから帰国したらうちの病院に入るかと思いきや、勝手に自分の母校の付属病院に籍を置いたりして、まったく何を考えているんだ」
呆れを滲ませたため息が廊下にまで聞こえてくる。
慶華医科大学附属病院で働いていること、お父様は反対していたの? それに高々女ひとりって……。
「園部のお嬢さんとの婚約だって破棄したそうじゃないか」
会話の内容に聞き入っていると、友梨佳先生との婚約の話が出てきてハッとする。
「向こうも乗気じゃなかっただろ、そのつもりだったとしても断るけどな。そもそも、親同士で勝手に婚約の話を進めたりしてどっちが勝手なんだよ。俺には真希しかいないんだ」
私のせいで聖一さんの将来が狂いそうになっている。
私のせいで聖一さんとお父様の関係が悪くなっている。
そう思うと急に苦しくなって、乱れかかった鼓動を宥めるように胸に手をあてがう。
聖一さんは自分のことよりも私のことを考えてくれていたというのに、昨夜は勝手なことを言って困らせてしまった。由美に励まされてなんとか元気を取り戻し、帰ったらちゃんと謝ろうと、私は頭の中で彼に言う言葉をあれこれ考えながら帰路に足を向けた。
ん?
玄関のドアを開けると、ピカピカに磨かれた見慣れない男性用の革靴に目がいった。聖一さんが新しい靴を買ったのかと思ったけれどサイズが違う。
誰か来てるのかな?
リビングに繋がる廊下を歩いていると、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。そしてドアを開けようとノブに手をかけたそのとき。
「もう帰ってくれないか? 何度説得しようと俺の気持ちは変わらない」
ひと際荒っぽい聖一さんの声が響いてノブにかけた手がビクッと跳ねた。
「医者として滅多とないチャンスを高々女ひとりのために無駄にするなんて、まったく愚かだな」
初めて聞く低く渋みのある声音。おそらくこの声の主は、聖一さんのお父様だと直感した。
「しかもアメリカから帰国したらうちの病院に入るかと思いきや、勝手に自分の母校の付属病院に籍を置いたりして、まったく何を考えているんだ」
呆れを滲ませたため息が廊下にまで聞こえてくる。
慶華医科大学附属病院で働いていること、お父様は反対していたの? それに高々女ひとりって……。
「園部のお嬢さんとの婚約だって破棄したそうじゃないか」
会話の内容に聞き入っていると、友梨佳先生との婚約の話が出てきてハッとする。
「向こうも乗気じゃなかっただろ、そのつもりだったとしても断るけどな。そもそも、親同士で勝手に婚約の話を進めたりしてどっちが勝手なんだよ。俺には真希しかいないんだ」
私のせいで聖一さんの将来が狂いそうになっている。
私のせいで聖一さんとお父様の関係が悪くなっている。
そう思うと急に苦しくなって、乱れかかった鼓動を宥めるように胸に手をあてがう。