怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「せっかく二人して休みなんだ、実家の用事が済んだらどこか寄るか?」

「ええ、きっと緊張しっぱなしだと思うんで息抜きできたら嬉しいです」

今日は聖一さんも私も仕事が休みだった。偶然にもお父様も在宅とのことで挨拶に行くなら今日しかないと彼が思い立ったのだ。

彼の実家は世田谷区の高級住宅街と言われている成城にある。緑豊かな街並みにデザイン性の高い住まいが多く、一戸の区画面積が大きい。そして磨き込まれた高級車で主人を待つ運転手の姿も見受けられた。

やっぱり社会的地位の高い人が住む街って感じよね……。

お父様に会ったらなんて言おう、自分のことをわかってもらうためにはちゃんと誠意を見せないと。

「ここだ」

あれこれ考えながら高台をあがると、とある大豪邸の前で彼が足を止めた。

す、すごい。

海外から素材を取り寄せたという豪奢な石張りの巨大外壁の邸宅は、ここ一帯でもひときわ目を引いた。玄関までのアプローチが長く、苔むした地面にバランスよく植えられた樹木は綺麗に剪定されていて、石造りの池に錦鯉が優雅に泳いでいた。ビバリーヒルズのような洋風の豪邸もいいけれど、聖一さんの実家は雅趣に富んだ日本家屋といった感じで、お父様趣味がところどころに窺える素敵な邸宅だった。だからか、一層緊張感が増して、私はごくりと喉を鳴らした。
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