怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
マンションにも帰れないし、相良家の用意した住居ってどこにあるの?

車窓の外に流れる都心のオフィス街を呆然と眺め、これからのことを考えていたら、後部座席の隣に座っていた男性から真新しいスマホを渡された。

「こちらが本日よりご利用いただきますスマホです。今、小野田様がお持ちのスマホは回収するように言われております」

「そんな……」

新しいスマホって、なによそれ。

聖一さんのお父様は抜かりない。私と関係のある人物すべてとシャットアウトするための強制的な手段に怒りを覚える。

『ここだけの話、聖一のお父様はスマートな方だけどとても利己主義な人でもあるのよ、あなたが太刀打ちできるような人じゃない。聖一ともし一緒になるつもりなら相当の覚悟がいるわよ』

ふと以前友梨佳先生に言われた言葉を思い出す。

なるほどね、友梨佳先生の言っていた意味がわかった気がする。

初めて聖一さんのお父様に会った時は冷たい態度だった。二回目に実家で会った時は微笑みかけてくれたからほんの少し期待してしまった。けれど、それはまったくの勘違いで初めから完全に蚊帳の外だったのだ。
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