怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

聖一さんを見送った空港から車を走らせて約二時間。

たどり着いたのは閑散とした田舎町で、ここの町にある唯一の総合病院の食堂が私の新しい職場になるらしい。どこからともなく潮の香りがして、見渡せば遠くに海が見えた。絵にかいたような素敵なロケーションなのに、私の目にはモノクロームにしか映らない。

定期的に私が父のお見舞いに行っていることは考慮してくれたのか、この場所は父のいる千田記念病院まで車で一時間もかからない所だった。しかもお見舞いに行く際には相良家の運転手が送迎してくれるという。

「なにか困ったことがあれば何なりとお申し付けください。お世話させていただきます」

相良家で用意された住居は無機質な真っ白い壁の二階建てアパートで、四戸部屋があるけれど私以外の住人はいないようだ。
なにか困ったことがあれば、だなんてあなたたちがそれを言う？

心の中で悪態をついてから私は相良家の使用人の男性たちに頭をさげた。そもそも、無理やりこんな見知らぬ土地に連れてこられて、私が頭を下げるのもおかしな話だ。