怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
『お前、かなり酔ってるだろ?』

『……はい』

『ちゃんと帰れるか?』

『わかりません……』

『ったく、しようがないな』

ずっと一緒にいたくて酔ってるなんて言って彼を困らせた。それでも聖一さんは優しくて、私に微笑みかけてくれた。でも、もう彼はここにいない。抱きしめてくれもしない、そのぬくもりに触れることもできない。

「っ、う……」

誰に聞かれているわけでもないけれど、口から零れる嗚咽を咄嗟に手で押さえる。ずっと押し殺してきたものがここで堰を切ったかのようにあふれ出す。唇をかみしめるとじわっと目元に熱がこもり始め、視界が揺らいだら雫が滝のように流れてきた。ここまでくるともう自分でも止めることはできない。膝が崩れて床に着く、大人になってこんなにも声に出して大泣きするのは久しぶりだった。

泣いて少しでも気持ちが楽になるなら全部出し切ってしまおう、明日から新しい職場へ初出勤だというのに、自分の顔パンパンに浮腫もうがどうなっても構わない。

私はなりふり構わず一晩中泣きはらした。
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