怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
翌日の朝。

「今日からお世話になります小野田真希です」

うぅ、初対面でこの顏みたらさすがにみんな引くよね……。

なんとか気持ちを切り替えて私は相良家の使いの男性から教えてもらった通り、〝笹野総合病院〟の食堂へ向かった。この町に唯一設立された総合病院で慶華医科大付属病院に比べれば規模は小さいけれど、去年改装工事をしたようで外観はさほど古臭い感じはなかった。

「おはよう。小野田さんね、こちらこそよろしく」

食堂の責任者である栗原さんという中年女性がにこりとして挨拶を返してくれる。

食堂はメルディーとはまた違う雰囲気で、薄暗くていかにも病院の食堂といった感じがした。馴染みのある光景を見ていたら、ふと職場の人たちのことが頭によぎった。

いきなり仕事を辞めたりなんかして、私、メルディーの人たちに迷惑かけちゃったな。

「じゃあ、さっそくだけど厨房の説明をするわね」

「はい、よろしくお願いします」

栗原さんはふくよかで人当たりよさそうな昔ながらの肝っ玉母さんといった風貌だった。そして私の話は事前に聞いていたようで、どんな人が新しく入ってくるのかと思っていたら、パンパンに目元を腫らし、浮腫んだ顔はまるで風船のような新人だったから栗原さんは私を見るなり一瞬ギョッとして驚いていた。
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