怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
昨日はまったく食欲もなくて眠る気にもなれなくて、一晩中聖一さんのことを考えていたらいつの間にか朝を迎えてしまった。鏡に映った肌は荒れていて、仕事柄あまりメイクもできず、こんな顔で来てしまった申し訳なさが募る。

食堂の従業員は十人もいない少人数で、平均年齢が五十歳くらいとやや高めだったから私が入ってきたことで花が咲いたようだとみんな歓迎してくれた。いったいこの病院と相良家がどんな関係なのかわからないけれど、幸い新しい職場の人たちはいい人ばかりで身構えていた力がふっと抜けた。 

いつまでもメソメソしてたらだめだね、聖一さんだって海の向こうで頑張ってるんだから。

初めこそは気持ちが沈みがちで失敗も多かったけれど、食堂のみんなが優しく接してくれたおかげでなんとか立ち直ることができた。そんな気遣いに恩返ししなきゃ、と一心不乱に働いてあっという間に一週間二週間と経ち、一ヵ月も過ぎれば仕事にも慣れてきた。

「小野田さん、なんだか顔色悪いみたいだけど……大丈夫?」

「そ、そうですか?」

顔を覗き込まれ、慌てて栗原さんに笑って見せるけれど、心配げな表情でじっと私を見ている。

「大丈夫です」
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