怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
脳裏に一瞬過る〝妊娠〟の可能性を、首を振って否定する。聖一さんとの子を授かったら嬉しいに決まっている。でも彼がどう思うかわからない。それに離れ離れになっている今はタイミングが悪い。

厨房の従業員に「お先に失礼します」と声をかけ厨房を出る。

やっぱり少し気分が悪いかも……。

そう思いながら更衣室で着替えをしている最中、ぐらりと一瞬視界が揺れた。

え、なに?

思い起こせば寝る前に聖一さんのことを考えては眠れない日が続いていて、食欲もなく、今朝も何も食べてこなかった。前に聖一さんが朝はコーヒーのみで済ませると聞いたとき、一日の始まりは朝食からですよ、なんて偉そうに言った自分が恥ずかしい。

きっと貧血気味になっているんだと、気合を入れるように両頬をパンパンと叩いたら少し気がまぎれた。

とにかく早く帰って横になりたい。

従業員専用出入口まですぐなのに、廊下を歩いている間がすごく長く感じた。そのとき。
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