怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「そうですね……でも、よく騙すより騙されるほうがいいって言うじゃないですか」

まるで今の自分に言い聞かせるような慰めの言葉だ。

馬鹿だな、私。

ぽつりとつぶやいて苦笑いする私に、友梨佳先生が同情するように眉尻を下げる。

「私、きっと聖一さんとの子どもを妊娠していると思います。まだ検査したわけじゃないんですけど……なんとなくわかるんです」

言葉にすると、私の中の母性本能が目覚めるようだ。もう母親になった気になってそっとお腹に手をあてがう。

「たとえ聖一さんと一緒になれなかったとしても、お腹の子だけは絶対に誰が何と言おうと守ります」

「あなたには、その覚悟があるっていうのね?」

じっと真剣な眼差しを私に向け、友梨佳先生が私の真意を確かめるように問いかける。

「はい。なんの根拠もないですけど……ちゃんとうまくいくって、今はそう信じるしかないですから」

心配そうに私を見つめる友梨佳先生に、私は今にも泣きそうになるのを堪えて笑って見せる。すると、彼女も小さく微笑みを返した。
< 206 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop