怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
――聖一さん、私たちの赤ちゃんができたんですよ。

――聖一さん、パパになるんですよ。

幸せに包まれながら、こんなふうに彼に報告できたらどんなによかっただろう。でも、そんな日が来ることはないかもしれない。頭の中に浮かんだ言葉だけが空しく響く。すると急に鼻の奥がツンとして、目元に熱がこもる。

泣いちゃだめ。

聖一さんのお父様は初めから別れさせるつもりだった。信じていた人に裏切られるのはつらい。

でも、友梨佳先生が言っているだけで確証はないもの。

そう言い聞かせている自分が惨めで、ツッとひと筋の涙が頬を伝う。

「大丈夫よ、ママがちゃんといるからね」

「おいおい、パパもちゃんといるだろ」

……え?

今、一瞬聖一さんの声が聞こえたような。

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