怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「……私が悪かった。使用人のことも、迷惑をかけた」

慌ただしいまま、私は聖一さんの車で彼の実家へと向かった。アメリカにいると思っていた息子が突然私を連れて目の前に現れたものだから、お父様はびっくりしていたようだ。そして「自分が渡米している間、こんな勝手な事やられたのではおちおち仕事にも手がつかない」「真希を連れてアメリカへ行く」と聖一さんがお父様に向かって啖呵を切ったところ、お父様は観念したようにぽつりと謝罪の言葉を口にした。そして鼓膜が痛くなるくらいの沈黙が応接間に流れ、私は居てもたってもいられなくなり口を開いた。

「あの、お父様が結婚に反対する理由は……やっぱりうちの家柄が悪いとか、私の職業的なことですか? それとも容姿の問題――?」

すると、お父様は静かに首を振って小さく笑った。

「本当のことを言うとね、全部違うんだよ」

「え?」

「本当に好きな人と結婚することは、それ以上に幸せなことはない。けれど、その存在を失ったとき……私は立ち直ることができなかった。だから聖一には同じような目に遭わせたくなかった。もちろん小野田さんにとっても同じことが言える」

どういうこと? と私は聖一さんと目を見合わせる。彼も、お父様が言ったことがわかり兼ねるといった様子で私を見返した。
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