怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「園部のお嬢さんと見合いをさせようとしたのも、聖一が彼女のことを愛していないとわかっていたからだ」

目を細め今にも雨が降り出しそうな窓の外を見つめるその瞳は、どことなく何かを懐かしんでいるような切なさが滲んでいた。

「薄々感じてはいたが……親父がメスを握らなくなったのは、母さんが死んだことが原因なのか?」

聖一さんが母親のことを口にした瞬間、お父様の表情がわずかに強張った。そして、しばらく黙り込んだあとゆっくり唇を動かしてぽつりとつぶやいた。

「母さんが死んだのは……私の責任なんだよ」

ひじ掛けに肘をのせ、まるで過去の事実から目を反らすようにお父様が目元を手で覆う。

「聖一、お前にはまだ話していなかったが……」
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