怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

「たとえ俺が真希を失っても彼女が俺を失っても、もう独りじゃないんだ」

「え？」

俯きがちに床に視線を落としていたお父様がパッと顔をあげる。

「子どもができたんだ。俺と真希の」

それを聞くと、お父様は大きく目を見開き息を呑んだ。結婚を反対しているにも関わらず先に子どもができたことを怒るだろうか、それとも一緒に喜んでくれるだろうか、胸の内が読めないお父様を見つめながらそっと手をお腹にあてがうと、聖一さんが包み込むように私の手の甲を優しく握った。

「大切な存在だからこそ、命がけで守りたいんだ」

しばらく黙って床の一点を見つめていたお父様の目元がふっと緩む。すると。

「ふふ、はは」

何の前触れもなく急に笑いだしたものだから、まさかついに気がふれてしまったのでは、と目を瞬かせ本気で心配になる。