怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「二人とも、必ず幸せになると誓ってくれ……それと」

コホン、と改めて咳払いをし、そしてちょっぴり照れ臭そうにお父様がポリポリと頬を掻いた。

「孫が産まれたら、その……私に抱かせてくれないか?」

まさか、お父様の口からそんなふうに言われるなんて思っていなかった。

私は胸がいっぱいになり、思わず歓喜の声が口から飛び出しそうになって慌てて両手で口元を押さえる。それでも目はすでに潤んでいて、「はい、もちろんです」と答えたと同時に大量の涙が溢れてきた。お腹の子の性別はまだわからないけれど、お父様が嬉しそうに笑いながら腕に抱いている姿が目に浮かんだ。

「よかった。小野田さん……いや、真希さん、今までの私のふるまいを考えたら都合のいい話だとは承知している。本当にすまないことをした。許して欲しい」

私はコクコク頷いて、頭を下げるお父様にニコリと笑顔を向けた。それに苗字ではなく、名前で初めて呼んでくれたことに胸が熱くなる。

「お父様にわかってもらえないままアメリカへ行くことはできないってずっと思っていました。でも信じていたんです。きっと伝わるって……」

私の笑顔にお父様が微笑んで応えると、氷が溶けるようにすべてのわだかまりが流れていくように感じた。

あぁ、これでやっと私は聖一さんと一緒になれるんだ。

ここへ来たときは今にも雨が降りそうなどんよりとした分厚い雲に覆われていたけれど今はすっきりと晴れて、差し込む太陽の光がまるで私たちの未来まで明るく照らしてくれているようだった――。

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