怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
突然、思いもよらないことを切り出され、私は大きく目を見開いて絶句した。そして真っ先に自分のせいだという思いに襲われ、私は膝の上でギュッと拳を握りしめた。すると、彼が今にも泣きそうな私の肩を抱き寄せ、宥めるようにこめかみにキスをした。

「真希の身体はまだ不安定だ。無理して流産にでもなったら大変だろ。大事な時期だからこそ負担をかけたくない」

「でも……」

「心配するな、すでに向こうの病院の部長に話はついてるんだ。家族が第一だって、そう言ってくれた」

渡米早々、快くまた日本へ送り出してくれるなんて、彼の上司は本当に家族思いの情の深い人のようだ。

「それに早く真希に渡したいと思って用意していたものがあるんだ」

渡したいもの?

いつの間にかローテーブルに置かれた小さな赤い箱、それを聖一さんから手渡される。

「これは……」

「いいから開けてみてくれ」

箱の中央でクロスしたリボンを解く、そして壊れ物を扱うかのようにそっと開けてみると、傷ひとつない純白に輝く指輪がのぞいて私は短く息を呑んだ。

すごく綺麗……でも。
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