怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
仕事中に何度も包丁で指を切ったり、カサカサに乾燥した自分の手には到底似合わない。嬉しいはずなのに、幸せすぎるとなぜか不安な気持ちが生まれる。

「左手、貸して」

色な考えを巡らせて指輪を見つめていたら、聖一さんがそれを箱から取りだし私の手を掬った。

「安定期に入ったら今度こそアメリカに一緒に行こう。でもその前にいい加減〝相良真希〟になってもらう。堪え性のない男だって笑われるかもしれないが、どうしてもお前を手に入れたっていう実感が欲しいんだ。だから明日にでも婚姻届を出しに行こう」

「聖一さん……」

「はい。よろしくお願いします」そう言ったつもりなのに声にならなくて、代わりにコクコクと何度も頷いた。すると彼は掬った私の手に優しく唇を落とし、左薬指に指輪をスッとはめた。するとその輝きが指から手、そして腕に広がりさらには私の身体ごと包み込まれるような感覚になる。傷だらけの私の指には似合わない。そんな卑屈な考えも一気に吹き飛ばされて、指輪はすぐに私の指に馴染んだ。

「聖一さん、私……幸せ過ぎて怖い」

つい本音がポロリとこぼれると、彼は私をギュッと引き寄せた。

「真希、愛してる。ずっと俺の隣で笑っていてくれ」
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