怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

エピローグ

「三年ぶりか、真希、疲れただろ?」

ようやく長距離フライトから解放され、聖一さんが両手を天に突き上げて、うーん、と背伸びをする。

「いえ、思いのほかゆっくり機内で眠れました。有紗もおとなしくしてくれてたし、ね?」

「うん、パパもママもつかれてるから、ありさおりこうにしてたの」

二つに分けた髪の毛をツンとさせ、聖一さんによく似た綺麗な瞳をクリクリさせながら私たちを見上げているのは娘の有紗だ。

三年前、安定期に入ると私は〝相良真希〟としてアメリカへ旅立った。異国でのマタニティライフは多少の不安はあったものの、聖一さんの心強いサポートのおかげで元気な女の子を出産することができた。むしろ大変だったのは子どもが生まれてからで、右も左もわからない土地で言葉の壁や文化の違いに戸惑い、ときには泣きそうになりながらもなんとか育児をやってきた。それでも幸せに感じることのほうが多くて、中でも家族ができたという唯一の喜びが心の支えになった。やはり母は強しだ。そして、あっという間に聖一さんの赴任期間が終わり、有紗を連れて今日帰国してきた。聖一さんも、三年前に比べて元々の精悍な顔立ちに深みが増した気がする。
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