怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「お父様、まだいらしてないみたいですね」

混雑する到着ロビーを視線を巡らし、きょろきょろと見渡す。

「ったく、迎えなんていいって言ったんだが……どうしても早く有紗に会いたいって聞かなくてさ、車で来るって言っていたからきっと道が混んでるんだろ」

お父様とは到着ロビーで待ち合わせになっていた。けれど、それらしき人物はまだ見当たらない。

聖一さんのお父様に有紗が産まれたことを報告すると『初めて孫ができた』泣いて喜んでいたらしい。もちろん私の両親も祝福してくれた。すぐにでも孫を抱いて欲しかったけれど生まれたばかりの赤ちゃんを連れての長距離フライトはあまり現実的とはいえず、聖一さんも首を縦に振ってはくれなかった。

「結局、赴任期間が終わってになってしまったから、なんだか申し訳ないです。うちの両親もお父様にはかなりお世話になったのに、直接まだお礼も言えてませんし」

私がアメリカへ発った一年後、父の容体が安定したことをきっかけに母が望んでいた在宅での介護が実現した。父と一緒に暮らせるという嬉しい反面、介護認定やら介護サービスの契約等、初めてのことだらけで母が困惑してたところ、聖一さんのお父様が色々と相談にのってくれて助けてくれたらしい。

「しかも父の担当医になることまで承諾して頂いて、私が海外から心配しなくていいように気を使ってくださったんですね」

「もうお前の家族とは身内なんだ、それぐらい当たり前だろ? それに帰国したら今度は俺が親父さんの主治医をうけ負うことになっている」

「え? でも……」

おそらく、聖一さんは帰国したらすぐに相良病院へ入職して忙しい毎日が待っている。
< 238 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop