怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
「じゃあ、俺がお前のファーストキスを奪った相手だって、そう思っていいんだな?」

悪びれるわけでもなく、むしろ彼は口元に笑みさえ浮かべていた。
いきなりキスをされていまだに頭の中が混乱している。相良さんはまるで蓋をした私の心をこじ開けようとしているみたいだ。

どうしてキスなんか……。

嫌な相手だったら思い切り突き飛ばしてビンタのひとつでもお見舞いしているところだ。でもそうしなかった。本能的に。

私、もしかしてやっぱりまだ……。

十年前に密封したはずの相良さんへの想いは、開けてみればまだ新鮮で変わらないままなのかもしれない。

「お、おやすみなさい!」

「あっ、おい!」

居た堪れず、これ以上相良さんと一緒に車の中にいることができなくなって、私は転がり出るように車から降りた。私を呼び止める声を背後に聞きながら車のドアを閉めると、一目散に自分の部屋めがけて走り出した――。
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