怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
はっきり言って今日は一日まったく仕事にならなかった。気を抜けば相良さんのことばかり考えてしまい、大ぶりだったじゃがいもの皮を剥けば気がつくと小芋のようになっていた。義さんからは「どうしたどうした恋煩いか?」とからかわれる始末。

「それで、由美の話なんだっけ?」

気を取り直して聞き返すと、由美は「はぁ」と長いため息を漏らした。

「やっぱり聞いてない。だーかーら、私が担当している脳外の先生のこと好きになっちゃったみたいって話よ」

え?

長々と語る由美の話を今までぼんやり聞いていたけれど、その言葉で一気に目が覚めた。

脳外の先生って相良さんのこと、だよね?

ほかにも脳外の先生はいるけれど、みんな中年か既婚者だ。由美が恋愛するには少しターゲットが違う。
相良さんと付き合う前に、話のネタで「彼氏はいるの?」と由美に聞かれてそのときは「いないよ」と答えたけれど、今は事情が変わってしまった。もちろん自分から「私、彼氏できたの。相良先生っていううちの病院の人」だなんてことも話してない。それに自分から恋愛話をするのも得意じゃない。

「あの先生、カッコイイよねー。背が高くてまた眼鏡も似合うの! インテリって感じ? すっごい私のどストライクでさ」

眼鏡? 相良さん眼鏡なんてかけてたんだ。知らなかったな。

私の知らない相良さんを由美が知ってるのもなんだかモヤッとしたけれど、今は由美が相良さんに気があるということが問題だ。それに高校の時の記憶だと、由美は一度好きになったらかなり積極的な性格で、感心してしまうくらいどんどん自分から攻めていくタイプだ。彼女は美人だし聡明だ。どこからそんな自信が湧いて来るのかなんて考えなくても誰もが納得できる。
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