怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
項にチュッと甘い水音を立てて吸いつかれ、大げさなくらいに肩が跳ねた。熱を持ち始めた彼の吐息が項から首筋を伝う気配がして、身体がトロンとしてくる。

はっ! いけない、これじゃ料理が進まない。

「早く着替えて来てくださいってば!」

「はいはい」

我に返り、身体を揺らして身じろぎすると、相良さんは茶化すように私の肩を軽く叩きながらクスクス笑って離れた。
こんなんじゃ、身が持たないよ……。

職場ではあまり話もできないどころか顔を合わせる機会もない。けれどプライベートになったら相良さんとの関係をたっぷり実感できる。そのギャップが嬉しくてどうしようもなく浮かれてしまう。

白出汁を軽く煮立てると、空腹を刺激するようないい匂いがしてきた。かき混ぜた卵をトロトロにして、鶏肉と玉ねぎと混ぜる。そしてご飯に載せれば完成だ。

「すみません、今晩はちょっと簡単なもので」

仕上げに三つ葉を添え、すでに着替えて座っている相良さんの前に出すと、待ってましたと言わんばかりにパッと顔を明るくした。

「うまそうだな、いただきます」
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