怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~
ひとりで悶々としているよりも本人に聞いてみればすぐにわかることだ。一旦深呼吸してから彼の向かいに座ると、相良さんの顔を見て静かに告げた。

「あの、この前由美と飲んだときに、その、脳外に気になる先生がいるって言ってて……今度デートに誘うって話してたんですけど、ちょっと気になって」

しどろもどろにそう言って失敗した。

いくらなんでも由美のプライベートだ。確かに担当している脳外の先生のことを好きになったとは言っていたけれど、それを私の口から言うべきじゃなかった。

「デート?」

あっという間に親子丼を平らげ、相良さんはグラスに注いだ水を飲み干すと首を傾げて怪訝な顔をする。
やっぱり何でもないです。そう言おうとしたけれどもう遅かったみたいだ。

「まぁ、誘って来たなら行くと思うぞ? そんなこと気にしてたのか?」

「え……?」

まるで他人事のようにあっけらかんとしている。「ごちそうさま」と手を合わせて、食器をシンクへ運んでいる相良さんを横目に、私は椅子に座ったまま動けなかった。

そんなことって、私と相良さんって付き合ってる……んだよね?

それでもほかの人からデートに誘われたら行くの? 相良さんにとっては普通のことなの? もしかして、恋愛にはすごくオープンな人なのかな? 何人も公認の彼女がいてそれが自分のスタイル、みたいな?

だとしたら私は何番目……って、いやいやいや! それっておかしいでしょ。
< 95 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop