世話焼き教師は、天邪鬼ちゃんを離さない

恋愛というものも理解していなかった僕は、“好き”という気持ちがどんなものかもわからなかった。



あの時の僕には勉強しか取り柄のない、つまらない人間で。



優しいと言われることもあったけど、人間関係が複雑化することを嫌っていたから無意識にそういう行動を取っていたんだと思う。



波風が立たないように、何事も穏便に住むように。



成績だけ保っていれば、厳しい親だって何も言わない。



このまま僕は、「何も無い」状態のまま大人になって、歳をとって死んでいくんだ。



今思えば、高校生が何を語っているんだと笑われるだろう。



そんなつまらない僕でも、花咲音は好きだと言ってくれていた。

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