もうお揃いだなんて言えないや。


       ◆彼氏Side◆


雨が降る中『今までありがとう。ばいばい』そう言って出て行った彼女。

「せめて雨が止むまでいれば?」という言葉に彼女が頷くことはなかった。


「最後まで言えなかったな」

その声は一人なった部屋に虚しく響く。

視線の先には新品のスニーカー。

それは初めて彼女と購入したお揃いのもので、箱に入れたままずっと大切にしまっていた。

それを俺は最後まで彼女に言えずにいた。

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