気づいたらそこは沼だった
「社長は俺やからな。結局は俺が決めるんや。だから旅行行くにしてもどっちの方がええ?会社の事を考えるとやっぱり土日か?だけど平日の方が空いとるで」

頭をよしよしされて、気持ち良さと嬉しさでギュッとツバサにしがみつく。

「うーん…来月なら有給取れるし私はどっちでもいいよ?ツバサや社員の子達の意見優先して決めていいよ?もし土日で混むのが嫌なら旅行じゃなくてもゆっくりツバサと家で一緒に居れるだけでも私は幸せだし」

「そうか。ならアンケート取るわ。にしてもお前ほんま可愛ええな」

ご満悦そうな笑顔で言ってくれるツバサに

「ツバサの方が可愛いよ。そんな嬉しいサプライズありがとう」

「なんやそれ」

ほら、照れても可愛い。

「ツバサってずるい生き物だよね」

「なんや急に」

「だってさ、普段はツンツンして毒吐いて過激な事をしているからこそ、こうやってちょっと笑ったり、照れたり、優しい言葉言うだけで可愛さが爆発するもん」

「そんなこと言うのアイリぐらいやで」

「いや、それは直接言わないだけでみんな思ってるって!現にあなた良く可愛いって言われるでしょ」

全く、無自覚ほど怖いものはない。これ以上可愛さ爆発される前にしっかり自分の事を把握してもらわないと。

「そんなもんか?」

未だ不思議そうな顔をしているツバサに対し

「なんで自分の魅力とか実力は分かってるのにそういう事は分からない…そっか。計算してやってないからか。ツバサは天然だしね。もういいよ。ツバサはそのままで居て?」

私が諦める形で折れた。
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