可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 それから30分ほどして、宗介さんは次の仕事があるからと、ふたたび壇上に立ち、最後の挨拶をした。
 そこからわたしを見つけて、視線を合わせてくれた。

 これだけの人のなかで、目を見交わせただけでもラッキー、と思っているところで、後ろから肩を叩かれた。

「はい?」
 振りむくと向井さんだった。

「橋本さんにお願いしたいことがありまして、よければ控え室に来ていただけますか」とよそゆきの声。

「はい。大丈夫です。伺います」とわたしはすぐ答えた。

「お願いしますね」と、営業スマイルでにっこり微笑まれて、逆に背筋が冷えた。

 なんだろう。わざわざ呼び出すなんて……
 嫌な予感がするんだけど。
 
 とにかく、行ってみなきゃと、わたしは向井さんより少し遅れて控室を尋ねた。

 控室の前には、付き人兼運転手の八神くんが立っていた。

 わたしが会釈すると、小声で「お待ちかねですよ」と言ってウインク。

 この間、旅館からの帰り、車で送ってくれたのが彼だった。
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