可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
「郁美の手料理か。そりゃ嬉しいけど」
「じゃあ、そうする」

 宗介さんはちょっと嬉しそうな顔をしたけれど、すぐに首を振った。

「いや、いいよ。俺、時間不規則だし。食べて帰ってくることも多いから無駄になる」

「でも、宗介さん、いつも外食ばっかりでしょう。作り置きできるものにするから。ここの冷蔵庫ならたっぷり入りそうだし。宗介さんは心配しないで、食べられるときだけ食べてくれればいいから」

 わたしが彼のほうを向いて微笑むと、彼は「ああ、じゃあ頼むよ」と言った。

 そして、わたしの肩に手を回して、抱き寄せ、流し目で見つめてくる。

「やっぱり食事より先に……こっちかな」

 肩に回した手で髪を優しく撫でながら、もう一方の手でわたしの顎をすくいあげ、自分のほうに向けた。

 薄茶色の瞳が蠱惑(こわく)的な色を帯びる。
 さっきとはまるで違う、熱を孕んだ眼差し。

 たったそれだけのことで、彼はいとも簡単に、わたしの官能のスイッチを入れてしまう。
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