可愛がってあげたい、強がりなきみを。 〜国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます〜
 その言って別れようとしたとき、コンビニから歩きスマホをしながら出てきた人が、わたしにぶつかってきた。

「きゃっ」
 思わずよろけたわたしを亮介さんがとっさに支えてくれて、彼に抱きとめられる格好になった。

「あ、すいません」
 彼はわたしからすぐに離れ、言った。

「ったく。ちゃんと前見て歩けって。今のこと、兄貴に言わないでね。事故とはいえ、郁美さんを抱きしめたなんて言ったら、俺、殺される」

 真面目な顔で言うので、思わず笑ってしまった。

「さすがにそれは大袈裟じゃない?」
「はっは、いや、そうでもないんですよ、それが。子供のころ、プロレスの技かけられて何度泣かされたことか」
 
 ひとしきり笑ったあと、亮介さんは髪をかきあげながら、「じゃあ」と手をあげて、駅に向かっていった。
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